令和義塾🛡中高生・高卒生・教員・留学志望者のための学習塾

仕事をしている人が意識する方が良いことや、我が国の在り方の改善策について述べるかも🐈

よくある英語の地理的拡大についての本を読んだ感想🐱

 まず英語を学ぶ意義に関しては、学習者の目標・目的により人それぞれであろう。試験を通過するために学ぶ者もいれば、仕事で使用するために学習する者もいる。また、趣味として英語学習に取り組む者も見られる。それゆえ、英語を学ぶ意義に関しては、画一的な決定はしなくてもよいのではないのだろうか。ただし、英語には世界共通語としての側面があるので、それを把握することは重要ではある。

 次に英語がどこから、そしてどのように広まっていったかということである。ブリテン島はアングロ・サクソン人、デーン人、ノルマン人などの侵入より、従来の古英語OE (アングロ・サクソン語)と古ノルド語・ノルマン語などが混じり、成立していったと分かる。現代英語を見ると、英語の表現にはフランス語やドイツ語などにも見られるものも多くあり、複数の言語の影響を受けて英語が成立していっていることも実感できる。

 また、古英語OEに見られる単語 were や wordなどは現代英語の単語と同一の表記であり、語の持つ意味もほぼ同じと見受けられる。一方で、表記が全く異なって見えるものもあるので、ここにも他言語の影響が見られる。ただ、例えば英語と日本語など、言語学的距離が大きく離れた言語ではなく、比較的言語学的距離が近い言語同士であるので、当時の言語使用者にとっては、日本人が英語を学習するほどの困難さもなく、さほど大きな抵抗がなかったのかもしれない。テキストには音声面の英語の特徴は述べられていないが、英語は言語学的に周波数の高い言語であり、ドイツ語も同様に高く、フランス語は低いなどの特徴がある。一般的に、言語周波数の高い言語を使う者にとって、周波数の低い言語を使う者の話し言葉は聞き取りやすい。加えて、同じ程度の周波数の言語話者の話し言葉も聞き取りは比較的容易である。よって、当時の言語話者にとって、ブリテン島への侵入者が使う言語の語彙を取り入れるのも、さほどの困難さがなかったのではないだろうか。

 イングランドでは、フランス語による政治支配への不満が高まり、西暦1362年には議会を英語で開催した。このように英語が公式の場でも復活していき、現代でも名高い作家チョーサーが表舞台に現れた。チョーサーは『カンタベリー物語』に代表され、その特徴はOEに比べかなりの単語が現代英語の表記に近くなっているということである (古庄, 2021)。チョーサーの時代から数十年後、カクストンがドイツから印刷機を持ち帰り、ロンドン方言の語彙の表記を採用し、それが英国全土に広まったということであった。それまでは手書きであった本が、印刷機により大量生産されることで、表記方法が英国全体に広まっていったことが示されている。   

 シェイクスピアの時代には発音の変化が起こり、現代英語の発音に近付いている。この変化の理由については、詳細は不明なようである。この時代の特徴は、シェイクスピアが全作品で使用した単語の数が36,000語以上 (古庄 (2021)『英語学ハンドブック 改訂版』 p33.) と言われていることが挙げられる。ラテン語ギリシャ語、フランス語、イタリア語、スペイン語からの語彙も使用されており、これらの語彙と英語の語彙が混ざることにより、新たな発音が生まれた理由の一つなのかもしれない。

 ジェイムズ1世は、カトリックプロテスタント双方に聖書編纂を命じ、英国国教会の聖書にした。この欽定役聖書における使用語彙数は約8,000語であり、36,000語以上の語彙数があったシェイクスピアの作品よりもかなり少ないことが分かる。これは読みやすいということであり、ジェイムズ1世は、国民に読みやすい聖書を普及させようとしていたことが分かる。古庄 (2021)によると、欽定役聖書はいわゆる「古臭い」中世の英語に逆戻りすることが志向されていたようである。聖書という書物は保守性を持っているほうが、威厳があると思われやすいため、そうしたのだと考えられる。

 続いて、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで使用されている英語に加え、インドとシンガポールでの英語についても解説されており、英国発祥の英語でありながら、使用者がどの地域にいるかによって、違う英語であることも解説されていた。

 また、英語学の先駆者および英語学の諸分野については、各年代における英語学者に加え、英語学それぞれにおける専門分野が紹介されていた。音声学・音韻論・語用論など、これらは英語に特有の分野でもなく、世界各地の言語もこのような専門分野を持つ。よって、ただ単に、英語と例えば日本語というような比較だけでは無く、英語の音声学と日本語の音声学などのような比較をすると、双方の言語についてより深く把握をすることができると考えられる。個人的な考察にはなるが、英語教員として仕事をする場合、英語学の諸分野どれも重要ではあるが、文部科学省の方針を鑑みるに音声学や音韻論に多少詳しくなっておく必要があると思われる。政府の方針が音声重視・英語そのままの理解重視というものであり、かつ英語に限らず言語学習の基盤は音声から、というのは最近ようやく広まってきた原則である。そのため、指導者は音声面について、その歴史的背景も把握しておく必要があるのではないだろうか。もっとも音声だけ詳しければよいわけではなく、音声面に関しては充分に把握し、そのうえで意味論や語用論など、他分野にも強くなっておくことが望ましいのではないだろうか。

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